【ホラー/怖い話】犬鳴峠

若いころにはなんでもとんでもないことができちゃうような気がするものである。
体の奥底から出てる得体のしれない大きなものが叩きつけるような衝動を与えてくる。
それを勉強に使う人もいれば、運動に使う人もいる。
また僕らの場合みたいにアホみたいなことに使う輩も少なからず存在する。

ぼくら二人がやったアホみたいなことっていうのは福岡から山口までチャリンコで漕いで行こうってものだった。
その距離おおよそ110KM。フルマラソン三回分だ。
その長距離を移動するのに使ったのは、用意したものは。
僕ら二人の手にあったのは6000円の入った財布と二台のママチャリだけだった。
計画はシンプルイズザ・ベストにチャリンコで山口まで行き船で帰ってくる。

まさに若かったからできたことだったんだろう。
実際に僕達は山口まで行くことが出来た。

行きのことはあまり覚えていない。
その理由は楽しかったからだ。
大抵の思い出と同じでいいことに関する記憶ってのは長続きしない。
ただ覚えているのは焼けつく程の暑さと照りつける日光。
日焼け対策と呼べるようなものは何一つしていなかったので唐戸市場でベリっと腕の皮1枚めくれあがった。
それともう一つ、たしか大分との県境あたりに差し掛かった時だったと思うが、死ぬほど傾斜のきつい長い坂をこいでる最中に相方が文字通りひっくり返った。
体育の教科書にバク転の項目があったらそのまま使えるくらい綺麗な円を描いた。
ブレーキの誤作動だった。
死ぬほど痛そうだったが、僕はゲラゲラ笑っていた。

多少のトラブルはあったもののそれ以外は問題なしで山口にまで到着することができた。
ここから大問題が発生する。
僕らの予想では、あと一時間はやく港まで到着することができるはずだったのだがいろいろ休んだり観光名所をめぐったりしているうちに時間を食ってしまったのである。

たかだが1時間なんの問題があるんだ?
と、都会派の方々は思うかもしれないが田舎の1時間は24時間の差を生むことが多々としてある。
そう……「時間を食い過ぎて最終便を逃してしまったのである。
ぼくらは唖然とした。
なんせ今日中に帰らなければ明日の学校に間に合わないのだから。
高速バスや新幹線といった移動手段ではチャリンコを持って帰ることができない。

ぼくらは悩んだすえに考えついた。
船が無いなら、チャリで帰ればいいじゃない!
こうして僕らは疲れきった体に鞭打って帰途についた。

そして僕達の心霊現象が始まりをつげる。

夏場の太陽は登るのも早い上に沈むのも圧倒的に早い。
僕らが九州に入った時にはもうすでに半分太陽が沈みかけてキャラメル色の夕焼け空が目に染みるほどにまでなっていた。
最大限ぶっ飛ばして帰っていた。
というのも犬鳴峠だけは夜中のうちに通過したくなかったからだ。

犬鳴峠。地元の人間だけでなく県外の人間ですらしっている超超超超超弩級のホラースポットだ。
この場所がホラースポットとなっている理由は単純で崖+急カーブという事故多発地帯であるからだ。まぁ当然出るわ出るわ幽霊が出るわ。
後ろからなんか追っかけてきただの、気づいたら助手席に誰か座ってただの。

びびりな僕たちは絶対にそこだけは避けて通りたかった。
でもまぁ冷静に考えて間に合わないわけで。

当然迂回ルートも考えるには考えた。
けど夜中に全然知らないルートを通って迷うということはもっと避けたかった。
僕らが出した結論はダイナミックに上がり込んで、ジェットスピードお邪魔しましたすれば幽霊さんも怒らないだろういう、合理的な(?)案だった。

かくして犬鳴峠に侵入した。あまりの急カーブに流石に僕も肝を冷やす。
友達はガチだった。
過負荷に晒されたママチャリがギシリギシリと唸りを上げる。

そしてそれは急にきた。

「あっ」
友達が叫び声をあげた。
「どげんしたとや?」
友達は真っ青な顔をしていた。
カラカラとタイヤのまわる音がした。

「チェーンがはずれた!」
「はぁ!?なんしようちゃ!?」

見ると完璧にチェーンが外れきっていた。
考えるまでもなく昼間のバク宙のせいだった。

「はよ直さんと帰れんやん!」
「わかっとうけん!ちょい待っとって!」

友達の直すスピードは遅い。
イライラして周りを見ているとあることに気がついた。

太鼓の音がする。どこからか。

「なんか太鼓の音がせん?」
「なんて?」
「ほらどっからか」

どんどんどんどんどんどん

「まじやが……」
それだけではない。

うううううううううううううう……

どこからかうめき声までもが聞こえてきたのだった。

そこからは半狂乱だった。
ふたりがかりで必死になってチャリを修理し、一目散にかけ出した。

翌日そのことを先輩にはなした。

「絶対うそやろ」
「いやいやほんとですけん」
「そんじゃそこまで連れてけや」

かくして僕らは先輩の車に乗せられて犬鳴峠に舞い戻ってきたのである。
昼の犬鳴峠は事故の心配こそあるもののそれ以外は極めて普通の道路である。

「どこや?」
「あ!あの辺です」

そして路駐しておりるとなんと未だに太鼓の音がしていた!

「どこから鳴りよんやろこの太鼓」

そういって崖下をみてぶったまげた。

「車が下にあります!」

僕らは崖を滑り降りて車を確認した。
中には死体があった。
そしてカーステレオからは和風ロックの音楽がなっていた。

そこからは警察にまかした。
警察からの返信によるとなんでも死後一週間以上たった事故死体だった。
太鼓はカーステレオの音。

ここでこの話はおわり。

ただひとつだけ釈然としないのはあのうめき声は何だったんだろうってことだけである。

 

【単発物ホラー】犬鳴峠

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