OVER ENDING【Re:bit】 第12話 試験範囲

イラスト作者様
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カーテンの隙間から入る光が顔に当たり、俺は薄らと意識を取り戻した。
昨日遅くまでゲームしていたからか、首が痛い。床に落ちてしまったのか本来あるはずの所に枕が無い。職務放棄とはやってくれる。

別に寒いわけでもないが、頭から布団を被りベットの中で丸くなっていると小さく電子音が鳴った。
――シャラリン!

枕元で充電していた携帯端末を羽毛の城塞に引き入れる。
画面の光が眩しい。設定を『暗い』に落してから、俺は音の原因を調べた。

「メール、ユナからか……。え……? 今何時なんだ?」

コロンで区切られた四ケタの数字を見て驚愕した。寝過ぎ。今日は休日なのでこれと言った予定も無く、完全に気が緩んでいた。
一人暮らしをしていると不規則な生活になるのは仕方ないとしても、流石に二回以上の食事を逃すのはまずい。
案の定、メールの内容も超過睡眠を心配するものだった。

窓から差し込む街路灯の光で目を慣らしていく。
城塞から這い出してゆっくりと立ち上り、大きな伸びをすると目が覚めてくる。
とどめに顔を洗うと夜の冷たい水が肌を締め付け、少し痛く感じた。

失ったカロリーを補充するために冷蔵庫を漁りながら、片手間で携帯端末を弄る。

「コウヤから……着信きてるな。あっ、ユナからも……二人と何か約束してたっけ?」

別々に連絡するのが億劫で俺は二人を≪会議通話≫に招待した。

通話が繋がると同時に喋り出す二人の声が脳味噌に響く。

「「ナユお前寝てただろー? こんな時間まで寝てるって事は……昨晩はおたのしみで? 三回もコールしたんだぜー?オレ」」
「「もーっ、心配で見に行こうかと思ったよ? メールもしたのにー! なっんの反応も無いんだもんっ!」」

元気ね、あなたたち……おかげで完全に目が覚めたよ。

「別に大した用でもないんだけどよ、選抜試験の予選内容発表されたろ? どーするよー?」

そういやこの前メールが着てたな。
選抜試験は筆記による学力試験とVRCによる実技試験の二回に分けて行われるらしい。ゲームテスターの選抜に座学の試験を行う意図が全く読めない。二段階選抜において『足切り』が行われることは別に珍しい事ではないんだが、異なった科目で『ふるいにかける』のはいかがなもんかと思う。
ゲーミングスクールなんだから、実技レベルは高くても勉強が苦手って生徒は少なくないと思うんだ。
俺みたいな<実技優等生ゲーマー>の事も考慮してほしいもんだな。

「オレ勉強は苦手なんだよなー。ナユーどうすんだよ」

ほらココにもいた。

「コウヤ、お前の場合『勉強は』じゃなくて『勉強も』だろ? VRCも苦手じゃないかお前」
「おまッ! またそれ言うかー! もういいだろー無事入賞出来たんだしよ」

選考会でコウヤの順位は六位だった。そのうえ、七位との差は僅か50ポイント程……『無事』と言うにはギリギリだ。
ちゃんと作戦を実行しないから危ない橋を渡るハメになったんだぞオマエ……。
ちなみにユナは安定したヒット・アンド・アウェイで難なくクリアしたそうで、三位にランクインしている。

断トツ一位の俺に、何も言い返せないコウヤはユナに泣きつくも「えーっと。ドンマイっ?」と軽くあしらわれている。大分ユナもコウヤの扱いに慣れてきた様子だ。微笑ましい。

「でもっコウヤ、筆記試験は三年生の内容だからね! 油断しないでしぃぃいーっかり勉強しなきゃ駄目だよっ? 選考会は何とかなったけどさ、私も今予習してるし」

甘いなユナ。座学なんて物は勉強して法則や原理を理解するのではなく、それら全てを暗記してしまえばいい話。教科書を丸暗記すれば教科書持込みOKの試験と同じッ! だから筆記試験楽……勝……んッ?

「「「三年の内容ッ?」」」「「「三年の内容ッ?」」」

馬鹿とハモってしまった。三年のテキストなんて持ってない……! そもそも俺達はまだ青春まっしぐら一年生。
持っている方がおかしい……。え? ていうか三年の内容? マジ?

「……えっ? そうだよ? 出題範囲に書いてあったから、私先輩にテキスト借りて勉強したよ……っ?」

上級生と交流があるなんて凄いなユナ。でもどうせ借りに行くなら俺達も誘ってほしかった……。三年の教室に出向いてテキストを借りるなんて発想、どこにも無かったよ。

「え……? 嘘でしょ? ウソッ! もしかしてっ、二人とも勉強してないの? 試験明後日なんだよっ?」
「ああ。今壮絶に後悔している。」
「まさか! 三年の内容とは……オレ勉強苦手なのに……もっと労わってくれよおおおおぉ」

とりあえずやばいぞこれは。よく考えればそりゃそうか。

「もうー……よし! 私が教えてあげるから明日一緒に勉強しよっ! 山当てるしかない!」
「うおおっ! まじ天使ーッ! スゲー助かる! けど『教える』ってユナちゃん、全部覚えてんの? ホントに?」

天使に疑いの目を向けると神の機嫌を損ねかねない。口を慎めコウヤ。こういう時は素直に「ありがとう」とだけ言っておけばいいんだ。

「フッフッフッ、私っ優・等・生だからねっ! 物覚え良いんだ! そうだっ! 試しに、なにか問題出してみなさい!」

褒めれば天狗、責めれば鬼。単純だな。まぁでも本当に凄い。
全部覚えたって、それもう卒業まで勉強しないでいいって事じゃんッ! 羨ましいッ!

「マジかぁユナちゃんぱねぇ。試しにじゃあ……『アルゴリズム教本31P』の問い3の答え!」
「……えっ? 問い3? そ、それはちょっとわからない……っかな。って!? そういうんじゃなくてっ! 内容だよ! な・い・よ・うっ!」

問いの答えを聞いてどうするんだよ。コウヤ、一回医者に診てもらえ……。もしかすると脳味噌にクレヨン入ってるのかもしれないぞ。

「馬鹿だなコウヤ。『アルゴリズム教本』って最初に『内容』言っちゃ意味無いだろ」

「……あっナユ。それもちょっとニュアンスちがう……っむぅ。はぁー……教えた所で二人には意味、ないかも……」

そんな哀れみの目で俺らをみないでよ……。

「あっ! そういえばさっ! 二人が私の家来るの、はじめてだよねっ?」

そう言われてみると、ユナの家には行った事がない。休みの日は大抵、ゲーム機が揃っている俺の家に集まろうって流れになるからな。今まで意識したこと無かった。

「はじめて初めて! つーかオレ、女の子の家に遊びに行く事自体、初めてだー! うっひょー! 今夜興奮しすぎて寝れねえかも!! うっわー、ユナちゃんの家ってどんなのかなー楽しみだなー!!」
「学生住宅だから別に普通だよ? ナユの家と間取りいっしょだしっ……てか! 変な期待、しないでっ! なんか緊張するしっ!」

コイツらは一体何を期待して、何に興奮してんだか……行ったところで『勉強漬け』なんだと思うと俺は気が重いよ。正直――

「……メンド」

…………。

――ピンポーン!
神様お許しください。
メチャクチャ楽しみで昨日寝れませんでした。正直、夢が胸いっぱいです。

◇第12話

各話サブタイトル作者
登場人物紹介こちらNORA×絵師様
プロローグ/第0話主人公補正KAITO×NORA
第1話偽りの始まりKAITO×NORA
第2話A.シャンプーKAITO×NORA
第3話ミス・パーフェクトKAITO×NORA
第4話馬と鹿KAITO×NORA
第5話忍者だってッKAITO×NORA
第6話トレードオフKAITO×NORA
第7話正義と欠陥KAITO×NORA
第8話死に急ぐ者KAITO×NORA
第9話友の追悼KAITO×NORA
第10話四番モニターKAITO×NORA
第11話ボーナススコアKAITO×NORA
第12話試験範囲KAITO×NORA
第13話アルファリーダーKAITO×NORA
第14話トレジャーハントKAITO×NORA
第15話チェックシートKAITO×NORA
第16話レバガチャKAITO×NORA
第17話記念写真KAITO×NORA
第18話手応えKAITO×NORA
第19話仲裁KAITO×NORA
第20話気遣いKAITO×NORA
第21話不貞寝KAITO×NORA
第22話ナカヨシKAITO×NORA
第23話ハーフタイムKAITO×NORA
第24話ルート分岐KAITO×NORA
第25話リアシートKAITO×NORA
第26話レストランKAITO×NORA
第27話夜の景色KAITO×NORA
第28話アクビKAITO×NORA
第29話ネクタイKAITO×NORA
第30話ドラゴンブレスKAITO×NORA
第31話尻尾KAITO×NORA
第32話反省会KAITO×NORA
第33話ノーデリカシーKAITO×NORA
第34話待ち時間KAITO×NORA
第35話キョウイKAITO×NORA
第36話リプレイデータKAITO×NORA
第37話初見明人KAITO×NORA
第38話ラクガキKAITO×NORA
第39話模範解答KAITO×NORA
第40話レシピKAITO×NORA
第41話実技本戦KAITO×NORA
第42話ファーストブラッドKAITO×NORA
第43話絶望と記憶KAITO×NORA
第44話試験開始KAITO×NORA
第45話醍醐味KAITO×NORA
第46話作戦開始KAITO×NORA
第47話必殺の一撃KAITO×NORA
第48話全力の結果KAITO×NORA
第49話ルールの思惑KAITO×NORA
第50話閉会式KAITO×NORA
第51話/第一部完結優勝チームKAITO×NORA

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