【ホラー/怖い話】悪魔(下)

イラスト作者様
リンクイラストは岩葉さんに描いていただきました!
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無意識のうちに逃げ出したのか、気が付けば私は家の玄関の前に立っていた。
今でも聞こえてくる。どこから聞こえてくるかも分からない悲鳴と轟音。何度も私の心を乱して、グチャグチャにして、壊してく。何度耐えても、何回我慢しても、それらは止まらなかった。
だから、私はただ止めたかったんだ。
でも、神父様は止めようとしただけの私を許さなかった。
なんでですか神父様。私はただ自由になりたいだけなのに。また楽しい日々に戻りたいだけなのに。それだけなのに、何で神父様は私にこんな苦痛を与えるんですか。
理解出来なかった。
神父様は言っていた。確かに言っていたはずなんだ。
叫ぶ悪魔は消えたって。神父様が教会から追い出したって。
でも、それは嘘だった。ずっと、ずっと、私の耳には聞こえていた。夜になれば何度も声をあげ、教会に行けばもっと私を苦しめた。
「ねぇ神様。私は何をすれば悪魔から逃げられるんですか?いつになれば私は解放されるんですか?神様、答えてくださいよ。ねぇ、神様!」
叫んでも、喚いても、神様からの答えは返ってこない。
絶望し立ち止まっていた私を見つけたのは私の祈りを聞いて駆け出してきたママだった。
ママは泣いてる私をそっと抱いて、一緒に家の中に入った。
その後はどうにかして私は眠りについて次の朝を迎えることが出来た。

翌日の夜、皆がベットルームで寝ている際に、私は一人怯えながら瞼を閉じることが出来なかった。
もし、こんな日々が続くなら、明日なんか来なければいいのに。
私は布団の中で体を抱きしめながら小さく呟いた。他の誰にも聞こえないように。ただ、私にだけ聞こえるように、悪魔には聞かれないように。

『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』

今でも聞こえてくる音を遮断しようと耳を塞いでみる。

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』

それでも、音は止まることを知らない。何度耳を塞ごうが、何度布団を頭に被せようが、この音は私の耳を通って脳にまで悲鳴を鳴らす。
やはり、止めるべきなんだ。早く、止めなきゃいけないんだ。
止めなきゃ。
止めなきゃ。止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ止めなきゃ
トメナキャ、トメナキャ、トメナキャ、トメナキャ、トメナキャ

「とめなきゃ」

悲鳴で密閉された空間をこじ開けて、私は向かった。止めるために。この悲鳴を止ませるために。
走って、転んで、また起き上がって走って。
何度繰り返したことだろうか。何度も何度も、悲鳴が聞こえる中、轟音が響く中、私は叫んだ。
「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
叫びの悪魔が聞こえなくなるまで、何も聞こえなくなるまで、私は叫んで叫んで叫んだ。
もう逃げ出してやりたい。もう死んでしまいたい。もう終えてやりたい。
だから、私はここに来た。
教会に入って私はあの叫ぶ悪魔のいる部屋に通じるドアを開けようとして、ドアノブに手をあてた。
唾を飲み込んで、覚悟を決めて私はそのドアノブをひねようとした。
しかし――

「そこに入っちゃいけないよ」

声がした。
何度も聞いた声で、何度も恐れた声で、何度も拒否した声だ。
今すぐにも逃げ出してしまいたい。早くこの人のそばから離れてしまいたかった。音が大きくなる前に、私の心を蝕む前に。
私は振り向くことなく目前のドアを開けようとする。再度ドアノブに手をあててひねろうとした。
「――っ!」
おかしい。何かがおかしかった。私の考えていた未来とは全然違う未来が目に映っていた。
違う、こうじゃない。私が望んだのはこうじゃないはずなんだ。私が願った結果は、こんなんじゃないはずなんだ!
「なんで……どうしてドアが開かないの!」
「当然だよ、レイチェル。そこには悪魔が封印されてあるんだ」
後ろから、神父様の声が聞こえてくる。
あぁ、もう遅い。もう、遅すぎたんだ。また出てくる。また、出てきて私を苦しめるんだ。
首を絞めて耳を?み千切って脳を掻き乱して心臓を押し潰して四肢を?ぎ取って

私を、死よりも恐ろしい場所に連れて行くんだ。

『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』

もう、無理なんだ。
私はもう耐えられないよ。これ以上、私はだめだ。ダメなんだ。もうダメなんだ。無理なんだよ。耐えられないんだ。
だから、助けてくださいよ神様。
「レイチェル、何でここに入ろうとするのかい?」
「……そうか」
あぁ、なるほど。そういうことだったのか。そういうことなら先に行ってくれればよかったのに、神様も意地悪ですね。
「答えなさい、レイチェル。何でここに……」
決まってるじゃないですか、神父様。簡単ですよ、神父様ならわかるはずですよ。だって、神父様は神父様なんですから。
「どうしたんだい、レイチェル。どうして君は……」
あぁ、まるで神様が私にこう伝えてるみたいだ。直接、耳元で囁いてるみたいだ。これなんだよ、私が求めていたのは。こんなに神様を近くで感じられるなんて、私はなんて幸せなんだろうか。
「――ですね?」
そうだ、そうなんだ。もっと、もっとしなければならないんだ。こんなんじゃ足りなかったんだ。だからもっと、もっと。
神様に私の大切なものを

「捧げればいいんですよね?」

両腕がヒリヒリする。もう今日は動かせないくらいに腕の筋肉は硬直していた。
「ふぅ、やっと終わりましたよ。神様」
この部屋にはイエス様はいない。あの美しい十字架に磔になったあの方の代わりに私は目の前に広がる一風景を眺めた。
それは綺麗とは尊いけれども、これは必要なことだったのだ。しょうがないのだ。
こうでもしないと、神様は私に答えを与えてはくれない。私を救ってはくれない。
「ねぇ、神様。もう私、報われてもいいですよね?神様、私を助けてください。私を、叫ぶ悪魔からお救いください」
両手を合わせて目前の十字架に両手を合わせて、膝を地面につき、瞳を閉じて祈りを捧げる。これで私は救われるのだと、安心しながら。
でも、
『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』
音は消えてはくれなかった。
「な、なんで」
なんで、消えないんだ。なんで、叫ぶ悪魔は消えてくれないんだ!
「ねぇ、神様!答えてください!どうして、私を救ってはくれないのですか?!ここまで私はしたのに、私の全てを捧げたのに、なんで神様は何もしてくれないんですか?どうして、私を救ってはくれないんですか?!どうして、どうしてっ!」
理解できない。なんでなんだ。私は――
「――あ」
あぁ、そういうことか、と私は悟った。叫ぶ悪魔の正体も。何で神様が私を助けてくれないのかも。なんで、私だけにしか聞こえないのかも。
すべて、分かってしまった。
最初から、分かっていればよかったんだ。最初から分かっていれば、こうにはならなかったのに。

「あぁ、これが、罪悪感叫ぶ悪魔ってやつなのね」

十字架に磔になった十二人の天使たちわたしのともだち神の子しんぷさまを見て、私は悟った。

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