【ホラー/怖い話】混ぜた元凶【ゲスト:ぽち】

スピンオフ元

それは、福岡大学のキャンパスで出会った、やけに美人な女の不幸な出来事だった。

わたしはリツコ。
その美人の親友“もどき”を演じてやってた。

あの子が借金や向精神薬にまみれていく姿を見かねて、ふと思いついたことを伝えただけ。
…勿論、あの子にとって一番危険になるような作戦をね。

でもまさか…こんなことになるなんて。
おかげであの子は大学には来れなくなり、田沼に至っては行方不明。
何か、本当に後味悪いわ。わたしが仕掛けたんだけどね。
心配してる“フリ”をして、あの子を何度か見舞うことはあった。
けど、内心は笑い声が響き渡って止まらない。

元々、あの子の事嫌いだったのよね、わたし。
やけに自信満々だし、容姿いいし、明らかに女子に嫌われるタイプ。
そもそも、わたしがあの子を嫌いになったのは、些細なきっかけだった。

「リツコ、本当に美人だよねー。」

いつもの他愛もない会話だった。
そう、わたしは美人と言われることに慣れきっていた。
だって、本当にそうだもの。
なので、いつも冗談めかして返していた。

「えー、そんなことないってー!」

でも、この大学に来て。

「あの子、本当に綺麗よね…」

「どこの高校出身なんだろう?」

「わたしもあんな容姿に生まれたかったー!」

わたしの“美人”という地位は、あの子に奪われた。
…正直、悔しかった。というか、認めるのが嫌だった。
本当に、嫌味だったから。あれだけ可愛いくせに、ブランド物持ったりしちゃってさ。
ちょっとお高く止まってる感じが、本当に嫌いだった。

だから、ちょっとお灸を据えてやる意味でも、あの案を伝えたの。

そして田沼も。
あんな…こいつに関してはあの子と同じ意見だわ。
あの気持ち悪い容姿に、コミュ障で何も言えない。
まさに、あの子の言う“神様が全力で手抜きして作ったヌケサク”ってやつ?
目に入った瞬間目玉が腐ってしまいそう。

…あんまり人を悪く言うのも良くない?今更よ。

それにしても、あの後、田沼が失踪したらしい。
確かに大学でも見かけないし、あの子に聞いても何も答えたがらない。
…まぁ、あの子がああなってしまったのも田沼のせいだから、口を噤むのも仕方ない。
とりあえず、あの子がこのキャンパスに来れなくなったことが、わたしにとっての一番の収穫だった。

…それにしても、田沼がその後、行方不明になったって、あの子から聞いた。
それに関しては、違和感を感じていた。
他の病院に入院してるとか、何かしら情報があってもおかしくないのに。
というか、あの子の書いてた調書?みたいなものを見せてもらったけど、それだけの傷で何の処置もなくどこかへ行くなんて自殺行為だって、素人目にも解る。
…田沼は、どこへ行った?
わたしがあの子に田沼を嵌めるよう伝えたことがバレた?
…はは、そんなことないよね、あの子ですらわたしの心の内を捉えそこねてたんだから。

数日後のことだった。

あの子を見舞うため病院に行くと、一人の男…だろうか、あの子の病室に入っていったのが見えた。
何だ、あんなに痛い目みたのにまた男?とか考えながら、わたしは病室に向かう。
すると、大声が聞こえた。

「何でここが解るの!?アンタ、どこかに行ったんじゃ―」

「僕は…僕は…」

おかしい。
この声は、あの子と…誰だ?
何か聞いたことのある声。気持ち悪い感じの…。
…まさかね。
そう思いながら、病室のドアに耳を近づけていると。

「キャー!」

甲高い女性の悲鳴と共に、ドアにある大きい窓に赤い液体がビシャ、という音と共に飛び散った。
何があったんだろう。
とりあえずこの現状を伝えるため、わたしはナースステーションに向かった。

「こっちです!」

わたしが先導して、もう一度病室へ向かう。
すると、到着する前にドアがゆっくりと開いた。
…そこには、血まみれの刃物を持ち、真っ赤に染まった服を着た田沼らしき男がいた。
男の身体がゆらり、とこちらに揺らぐ。
ゆっくりとこちらに視線を向けた。

「君が……リツコ?」

目が、笑っていない。
よく見ると、顔にはもっと多く、血液だろうか、赤い液体が飛び散っていた。
男は、言葉を続けた。

「彼女から聞いた、僕を嵌めるつもりだったんだろう?」

ヤバイ、こいつは田沼だ。
しかも、何故かあの子がしようとしてたことを知ってる。
いつ聞き出したの?というか、あの子はどうなったの?
田沼は言葉を続けた。

「僕に声をかけるように言ったのも、リツコ、って言ってた。」

本気でバレてる。
どうしよう、田沼が近づいてくる。
でもわたしは、足がすくんでしまって動くことすらままならない。

田沼は、ついにわたしの前に到達した。

「お前のせいで彼女は…。」

わたしのせい?は?どういうことよ?
あの子がこうなったのは、わたしのせいって言いたいの!?
悪いのは、アンタを嵌めたのはあの子よ!?
わたしは関係ない、わたしは、関係ない…!
心の中では反論出来ても、目の前の圧力には敵わず声すら出ない。

「お前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいだお前のせいお前のせいお前のせいお前のせいお前のせい」

田沼が、わたしの方に刃物を向け、

…そこから、わたしの記憶はない。

正しく言うと、あの子の見舞いに病院に行って、その後……。
とりあえず、頬に小さな傷が残っていて、何故かこの病室にいる。
…いや、病室なのだろうか、ただただ真っ白な部屋で、ベッドが一つ、わたしが寝ている分。
それと、真っ白なカーテン、窓はどこにもない。
わたしは、いったい何を見たんだろう。
それを考えると頭痛が走り、ベッドの上で暴れ出してしまう。

「…薬を。」

「はい。」

看護師達に押さえられ、注射を打たれる。
すると、急激に力が抜けていき、目の前がぼんやりとする。
そのぼんやりした視界に、一人の人間が浮かび上がった。
見覚えのある、綺麗な顔がぐちゃぐちゃに切り刻まれた女。
その女が言った。

「…リツコ…絶対に…許さないから…」

わたしは、恐らく汚らしい悲鳴をあげて意識を失ったのだろう。
誰かが走ってくる音がする。

「大丈夫ですか!?何がありました!?」

身体を揺さぶられるが、わたしは力が抜けていて反応出来ない。
この程度の声じゃ、今のわたしを起こすことなんて出来ないんじゃない?
そんなことを考えていると、頭の中がふわふわしてくる。
そして、わたしの意識は遠のいていった。
…また、あの夢を見るのだろうか…。

傷だらけの顔の女と、真っ赤に染まった刃物を持った男の夢を…。

…静まり返ったわたしの部屋。
何故か、とん、とん、という音が聞こえる。
これはどこからだ…?部屋の外?夜勤の看護師か…?

そんなことを思っていると、その足音がすぐ近くで止まった。
そして、静かに、わたしの目の前にあるドアが開いた。

…なんだ、こんな夜中に…?
しかし、そのドアの先にいた人間に、わたしは驚愕することとなる。

あれは…男…?でも面会時間は……。

え、あれ、知ってる、誰だっけ……。

「リツコさん……みぃつけた。」

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