【ホラー/怖い話】迷信不信

非科学的なことは信じないようにしている。というのも、私が理系人間だからなんだけれども。世間一般的にはリケジョ、だなんて呼ばれるけど、私はその呼び方が大嫌いで。土木女子ドボジョだの、農学系女子ノケジョだの、女がやるのがそんなに珍しいかって言いたい。もちろん、宙ガールや山ガールにも異議を申し立てたい。何だよ山ガールって。山岳好きの女性なんて腐るほどいるじゃん。マスコミがこぞって付けた名前なんかに乗るわけないって。悪いかよ、理系で。だからって、ださいショートカットにしてるってわけでもないんだから。ネイルしないのも別に理由なんてないよ。強いて言うなら、めんどくさいってところかな。髪だって短いと速く乾くし、ネイルとか剥げたら一々手入れするの大変だもん。

っと、ごめんごめん。話を戻すね。そんなわけで、私は理系人間だから、非科学的なことはあんまり信用してない。そりゃ、占いとか嫌いなわけではないし、正月に初詣も行くけれど、特別信用してないってだけ。神様仏様ってするときももちろんあるよ。学生時代にテストの出来が悪かったときとかね、単位くださいってさ。

でもさ、世の中には得体の知れない何かって、やっぱいるんだよ。うまく言えないし、非科学的なことは信じないって言ったばっかりだけど、霊的な何かとか、後世への恨み辛み、ってさ。ちょっとだけ、話半分でもいい。聞いてほしいんだ。

* * * *

大学一年の頃の話。特別広くは交友関係を深めようとは思ってなくてね、文学サークルに入ったんだ。メンバーは代表のマツナガさん、みんなからは会長って呼ばれてた。それから、三年のアリサさんとマキさん、ノセさん。私を含めて、五人だけ。少ないでしょ、隅っこにあるようなサークルだしそんなもん。私以外はみんな文系で……ほら、マンモス大学だから。それで、夏にみんなでキャンプしたんだって。

私はね、レポートの方が忙しかったから行けなかったの、そのキャンプ。サークルの皆さんにすごく謝ったんだけど、みんな学生の本業は勉強だからねって言ってくれたの。本当に申し訳ないなって思った。でも、今じゃ行かなくてよかったって、正直思ってる。

男二人の運転で、川辺の方まで行ったんだって。キャンピングカーを借りてまで、キャンプ場でわざわざ泊まり込み。なんか凄い楽しそうじゃん? 昼はみんなでバーベキューしたんだって。ザ、大学生って感じだよね。でも事は、夜に起きた。

夜間は川岸、立ち入り禁止になってるの。暗くて足を滑らせたら危険だからって理由でね。でもそこを、会長達は強行突破して足を踏み入れた。

ノセさんは、みんなにこう話したの。

「ここは昔、小さな村の神殿みたいなものだった。四年に一度、ななつになる女の子の髪を十七センチぶん一束、中指の爪を二枚、奥歯を一本。選ばれた子供の母親が、それを用意して神殿に祀る。その指名は四年前に選ばれた子供が、神殿にてお告げとして訊かされる。きちんと儀式を執り行う事で、神の怒りを鎮め、豊作と平和が約束される。選ばれた子を『贄巫女にえみこ』と呼び、彼女はお告げを訊く四年後に、『告巫女つげみこ』と呼ばれるようになるという。
ある年に、告巫女が、『今年の贄巫女はいない』と言った。そんなはずはない、ななつの女の子は、村にその歳にひとりだけ居た。異例の事態に対し村人は、そのたったひとりのななつの女の子を、贄巫女として選ぶのが正しいと主張する。ななつの女の子の母親は、彼女を連れ洞窟へと逃げた。告巫女に告げられていないのに、愛しい娘を傷付けて、贄巫女にするのはあまりにも可哀想だ。小さな村、すぐに追っ手は来る。それでも母親は、娘を庇い続けた。その果てに母親は死に、女の子は贄巫女とされた。
母親が神殿に祀らなければ、儀式として成立しない。それにもかかわらず代理人を立ててしまったがために起きた間違いは、村に災いを呼んだ」

こんな話を、何かの本で読んだらしくて。調べたところ、キャンプ場近くの川の付近に、その洞窟があったんだって。それを確かめに行こうだなんて言うんだから、馬鹿みたいでしょ。それに乗り気だったのがマキさんと会長だった。渋々着いていったって言うのが、ノセさん。まあそのノセさんも、結構ノリノリだったらしいけどね。アリサさんは、本当に最後まで嫌がったんだって。

で、到着してみたらお札びっしりだって。普通にビビるよね、そんなん。今にも剥がれ落ちそうなボロボロのお札が、洞窟の入り口から、もう所狭しと貼り付けられてた。中に入ってみようかと、マキさんが先行して、先に入っていった。後を追うようにして、アリサさんとノセさん。それから会長。マキさんはどんどん先に進んでいて、なかなか追いつかなかった。

最初に悲鳴を上げたのは、アリサさんだった。足元に、長い髪の毛が落ちていたらしい。それが今にもそこで切られたばかりのように、ばらばらと束になって落ちているのが、懐中電灯で照らされた。その先に、マキさんが居たの。長い髪の毛をばっさり切られて、口から血を流していた。聞けば突然口の中に異物を感じて、出してみたら歯が取れてたって。ノセさんが中指の爪を確認するように言うと、指にうまく力が入らなくなっているのにマキさんは気付いた。爪がないと、指先って力が入らないんだよね。やばいと察したメンバーは、一目散に洞窟を出る。

あ、お気付き? その通り、会長が居ないの。ノセさんはアリサさんとマキさんをキャンピングカーに戻して、一人で会長を探しに行った。三人で戻るとき、ノセさんは「言い忘れていた」って、二人に話したことがあったの。

「贄巫女の母親の代理をしたのは、贄巫女をあの女の子だと最初に決め付けた、村の男だった。その男は儀式を誤った祟りなのか、それとも贄巫女の母親の恨みなのかはわからないが、洞窟近くの川で全ての髪が抜け、奥歯を一本だけ残し、中指の爪の他を剥がされた状態で死んでいた」

会長は変死体として処理されたよ。ノセさんのその話通りの状態じゃあ、ねえ。もちろんサークルは解散。なんども言うけど、私は理系人間だから、非科学的なことはあんまり信用してないんだ。それでも、マキさんの体に起きたことは事実だし、会長が亡くなったのも事実。やっぱりあるんだよ、非科学的な何かって。わからないだけで、あるんだよ。でもそれももう、四年前の話になるのかと思うと、ちょっと懐かしい気もするな。あの時のメンバー、今何してるんだろう。

もうこんな時間? ごめんね、長々こんな話しちゃって。歯医者の予約入れてるの。ちょっと奥歯一本、インプラントで入れようかって考えてて。それじゃあ、また。

【単発物ホラー】迷信不信

小説タイトル作者タグ読了予測時間(分)
みっくちゅじゅーちゅ夜空人間系、グロ注意4
その瞳は何色か夜空ミリタリー、人間系5
ドライブKAITO人間系、パッと読み1
トモダチ瀬尾標生心霊系3
犬鳴峠夜空心霊系5
ピアノと妖精瀬尾標生心霊系6
藁人形夜空心霊系、怪奇系4
幻の原稿夜空怪奇系10
サツジンジケン瀬尾標生心霊系、怪奇系5
樹海の中で夜空心霊系20
違和感瀬尾標生心霊系、グロ注意8
ミソカヨー夜空心霊系、怪奇系10
嫌な家夜空心霊系、怪奇系7
悪魔(上)瀬尾標生心霊系、洋風12
悪魔(下)瀬尾標生心霊系、洋風7
鼻(前編)夜空人間系、意味怖10
鼻(中編)夜空人間系、意味怖10
鼻(後編)夜空人間系、意味怖10
(E)scapeGoat瀬尾標生人間系、サバイバル系7
Night Terror瀬尾標生人間系、パッと読み1
隠し家の三悪人(上)夜空人間系10
隠し家の三悪人(下)夜空人間系10
ホクロ夜空意味怖、閲覧注意5
緊急停止初矢粒人間系、グロ注意3
訳あり物件まるけす人間系、都市伝説、一部実話、パッと読み1
迷信不信初矢粒意味怖、心霊系4
産まれて来るキミへまるけす意味怖、心霊系5
魂売りませんか?夜空意味怖、心霊系5
大物youtuber夜空意味怖、心霊系5
後ろ夜空意味怖、心霊系5
鉄の雫初矢粒人間系、グロ注意5
催眠まるけす人間系3
人魚姫その後
夜空意味怖6
ゆうかいなう初矢粒意味怖5
めいにち夜空人間系、パッと読み3
同窓会夜空意味怖5

シェアして貰えると創作の活力に!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA