【ホラー/怖い話】大物youtuber

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メルカリでアイフォンを買った。なんとたったの2300円だった。

機種は5sだったし、よくあるジャンク品でもなかった。あまりに話がうますぎるので、箱だけとか、アイフォン5sといった名称のなにか別の商品の線を疑ったがそれもどうやら違うらしい。出品者の欄も当然検索する。しかしこれも予想を裏切り200以上出品しそしてその多くが大変良いの評価をされているという超優良出品者だった。

 

これだけ条件が揃えばもはや買い渋る必要もないだろう。

2300円を溝に捨てたか、落としたつもりになって買った。

そうして、とどいたのである。あのアイフォンが。

 

送料はあちら持ちだったのではんこをつくだけで良かった。

爽やかな配達人に笑みと返事を返しながらダンボールを受け取ると、ドアをしめた。

値段が値段なのでそこまでする必要もないとは思ったが相手方の個人情報の欄に目を通した。新潟県でアイカワ ルミというらしい。

それだけを確認し頭の片隅にとどめると、さっそくその場で破る。

すこし大きすぎる印象をうけるダンボールの中にはぽつねんとハンカチにくるまれ輪ゴムで止められた商品があった。ハンカチを解き手に取る。外の冬の風に当てられたひたつく冷たさが掌に心地よい。

ー問題は作動するかどうかだわな

付属していた充電器を差し、しばらく待つ。すると画面上にみなれたリンゴのマークが浮かび上がってきた。そして見慣れたロック画面。

「は?」

……なんとこのアイフォン初期化されていなかったのである。

それから先はメルカリガイドに決められた通り、出品者にアプリの連絡フォーラムを使ってクレームを努めて冷静な文章で送りつけた。

すぐにプッシュ通知が来た。そこはさすが優良出品者といったところか。と思ったのもつかの間、メールを開き思わず目くじらを立てた。

「すいません。こちらのミスです。パスコードがわからないんです。アップルストアにいって解除していただけますか?手続きはこちらで全て済ましておきますので」

ーなんで自分のアイフォンなのにパスコードがわかんねぇんだよ

という疑念が湧くよりもはやくある仮説が頭をよぎった。

やたらに安い金額で、パスコードが分からない。

「盗品か?」

その旨をまたメールを使って送った。こんどはもはやアプリを閉じる必要すらなかった。瞬きするような勢いで返信が来たのである。

「それは誤解です。先日私の方の兄が他界しましてその遺品整理をしていたのです。兄のパスコードがわからず。もうしわけありません」

突っ込みたいところが山ほどある。

まず、なぜ兄の遺品を勝手に売っぱらおうとしているのか。

兄とのつながりのある一品をなくしてしまいたいと言ってしまえばそれまでだが、それでも逐一商品の処分の手間がかかるメルカリなんかに流すだろうか?かえって余計に辛い思いをするはめにはならないだろうか?

そしてアップルストア、そこには連絡が入っているのだという。つまり秘密の暗号は知っているわけだ。なぜ、それを知っていてパスコードは知らないのだろうか?おかしいだろう?そのような思いの丈をメールを使ってぶつけようと思ったが、やめた。

理由はめんどくさいからだ。これからメールを書き、怪しいので警察行くとつげ、そのあと実際に警察にいき、報告書を書き、証人として仕事をやすんで法廷にいく。

そんな手間を掛けるくらいならアップルストアにいってアイフォンのセーフティを解除してもらったほうが数百倍楽である。良心がちくりと痛まないような気がしないでもなかったが無視した。

 

そうして話は数日後に飛ぶ。

結論からいうのであるならセーフティは解除することができた。

当然アイフォンのロックを解除しただけなので中身の初期化までは行われていない。

一市民としては中身を見ずに初期化をし、そのまま何も知らずにつかえばいいのだろう。

が、やはり好奇心というのもある。特にこれが本当に相手方の兄弟のアイフォンなのか?ああはいったがやはり気になる。そしてその疑問への答えは存外すぐ見つかった。

アイフォンを使った人ならだれしも一番最初に何かしらの個人情報を入力させられたと思う。そしてそれらはすべて、設定画面で確認することが可能だ。幸いにも設定にまでもはロックが掛けられていなかった。

すると、やはりビンゴだった。

彼の名前はタナカショウゴだった。アイカワではない。

自動的に彼らにつながりのないことも証明される。つまりこの出品者は嘘をついていたわけである。そうまでして隠したいことは?決まっている。他人のものを自分のものにしたからだ

「やっぱり警察かぁ……」

疑念が確信に変わった今行動を起こさないというのはどうなのだろう。

しかしやはりめんどくさいという気持ちが揺らぐことはない。

「あ、そうだ」

一つひらめきが生まれた。このアイフォンを調べ、もともとの所有者アイカワではなくタナカの手の中に返してやるのである。こうすれば本人の手にアイフォンは渡るわけだし、僕は裁判やらなんやらの手間が省ける。どちらにとっても良い関係が築けるというわけだ。

しかしここで問題が発生した。

彼は、タナカは、あまりネットショッピングというものを利用しないらしく住所を記載したようなアプリが一つもなかったのである。これにはこまった。これでは何一つ得るものがない。設定の画面には流石に住所まで打ち込まれているような素振りはなかった。

となるとあと情報が得られそうなものは限られている。

しばらく悩んだ末にあまり気はのらないがブックマークを調べることにした。昔の偉い人は本棚をみればその人がどんな人かがわかると言ったが現代においてはブックマークがそれにあたるだろう。僕がタナカに下した判断はこうだ。

エロ野郎。

彼はなんと11もの出会い系サイトに登録していた。しかもその中には有料のものも含まれていた。ここまでして女の子と会いたいか。心のなかに呆れとも尊敬ともつかない苦い気持ちが湧き上がる。そして当然のごとくブックマークにめじろおしなのはアダルトサイトである。彼はスレンダーな金髪美女が好きなようだ。

ー返せても、ブックマークをしらべたとはいえないなぁ

そんな見当違いの心配をしながら調べていくと面白いものがあった。

Youtubeに動画を投稿するための編集サイトである。そしてそれ以外にもyoutube関連のサイトが多数登録されていた。

その中の一つを開くといきなり管理者フォーラムに飛ばされ面食らった。

……どうやらこのタナカさんはyoutubeに動画を投稿していたようである。私は今まで見ることこそすれ、動画を作ろうなんてことは考えたことはなかった。興味の食指が動く。ここから先は完全に好奇心だった。どんな人なのだろうか?そして私は動画リンクのpart1を開いた。

暇を潰してくれるのではないかという若干の期待をこめて。

 

広告をスキップすると、動画が始まる。

カメラの前に映し出されたのはなんとも生活感のない部屋だった。イスが一脚に据え付けのクローゼットが一台。右端には本棚が見えるがあまり読んでないのかラベルぴしりと整列していた。そして彼、タナカが中心に移っていた。彼を一言でいうのなら、絶妙なブサメンである。うまく形容しづらい、もし町ですれちがったら別段目もくれる必要のない一般人なのだが、よくみるとどことなく嫌悪感を抱かせるものがにじみ出てるのがわかる。例えるならSMAPのメンバー全員を足して5で割り、いいところをすべてひいたのであるなら彼になるだろう。まぁ、動画の価値は本人だけでは決まらない。内容や編集によってかなり評価が変わる。

と思ってみたのだが、内容も編集もひどい、いや褒め過ぎである。動画として破綻している。変なところで変なSEが挿入される。動画の内容もいわゆる食レポとゲーム実況ばかりであり斬新さもなければ特別見たいとも思わない。動画としては三流以下だ。

ーしっかし

なんと再生回数が10万回を超えているのである。敬虔なるyotube信者の方々なら知っていると思うが二桁万回超えている動画はなにかしらわけがある。有名人が写り込んでいるとか、炎上回だったりとか。そうでもないとこの三流youtuberの動画がこんな回数を記録するとは思えない。なにかからくりがあるに違いないとリンクを踏んでいく。しかし分からない。しばらく動画をみながらまともに回答を探すのがだんだんアホらしくなってきた。疑問にぶち当たったときは決まっている。彼のyoutubeでの名前はデンチュウだった。田中だからデンチュウか。

「情報リテラシーに疎いな」

検索結果がでる。するとすぐにわけも見つかった。すごく薄く要約するとこのデンチュウ氏は『アホ』なので見ていて楽しい。そういうことがすごく口汚い言葉で記事にされていた。

そう意識してみてみると確かにおかしいとも見れないこともない。まずすごく単純な漢字がよめない。時間という漢字がよめなくて咳でごまかしたり、情報をジゴクとよんだりと義務教育をおえたのかと首をひねりたくなるざまである。さらに嘲笑をさそうのが彼自身が自分に自信がありすぎるということだろう。彼がyoutuberを続けていられる原因の一つとして実家が金持ちでかなり長いあいだニート生活を続けていられたということがあるらしい。そして散々甘やかされた上に、せっかく育ててくれた両親が死去。その金を使って悠々自適な生活を送っていたことにより、他には見れない独特な性格が彼の中に構築されたらしい。自分はもてて仕方ないということを動画内で何度も連呼している。モテているはずがないのに。がコメントでそれを指摘されるとまるで痛いところをつかれたように必死になって否定するのである。それが燃料となってさらに炎上する。動画はあちらこちらのサイトに無断で転載され、彼のことを知らない人物までもが集まってくる。こうして彼の動画の再生回数が上がっていくという好(?)循環によってじわりじわりと彼の再生回数がのびていったというのがことの顛末らしい。

かくいう私もなんんだか後半彼のことがかわいそうになってきて思わず動画をクリックしてしまっていた。そうしてあるタイトルの動画のところで手が止まった。

『彼女が出来ました!』

「いやそれ絶対ネカマだろう」

思わず素の声でツッコミを入れてしまった。どう考えたところでこの男にそんなものできるとは到底思えないのだから結論はそこに至る。動画をろくに見もせずそのまま彼の彼女さんとやらの情報を調べていく。コメント欄をみるかぎりではpart91まで彼女が出てくることはないらしい。一気にその動画まで飛ぶ。

「どうもーこんばんわ。今日は俺の彼女を紹介します。レナちゃんでーす」

「どうもー」

ー嘘だろう!?

なんとネカマでは無かったらしい。しかもかなりの上玉である。どうやってこんな女の子をと問う暇もなく画面のなかの彼が回答してくれた。

「彼女はー僕のーファンだったらしくて?それでお付き合いさせていただいています」

ーまじ?俺もyoutuber始めよっかな

絶対になにか裏があるに違いない。私はネットの海の中へと潜った。

デンチュウ 彼女でぐぐると約6000件もの数がヒットした。

その一つひとつを調べていく。そのときを思い返してもはっきりしているのだが、もはや彼の手の元にアイフォンを返すという大義は頭の中から消えてしまっていた。検索結果をまとめるとこうなる。

この彼女、どことなく堀北真希を連想させる東洋系の美人の名前はアイといい、年齢は25から後半。社会人であり、どうやら地元の弁当屋で働いているらしい。つまりタナカとは違い極めて真人間であるというわけだ。ただひとつ難点をあげるとするのなら

ー浮気。尻軽らしい?

動画内でなんどもタナカもといデンチュウが他の男の影をちらつかせているのである。

「まじで、アイのやつさぁ。電話してもでねぇの」

「あいつ男物の下着をもってやがった」

「こんなに好きなのにどうしてわかってくれないかなぁ」

彼の発言は大物youuberのストーカー発言とかいう動画にすべてまとめられて転載されていた。だが、いままで一つひとつ動画を見てきた私にはその気持がよくわかった。こいつは自信過剰でかなりのナルシストだが、悪い人間ではない。実直で自分の欲望に素直すぎるだけだ。だから余計に不安だった。その純真さが裏目にでれば悲惨なことになるだろう。

そして彼の発言は加速していく。

「この前あいつのアイフォン見たら彼氏の電話番号見つけたんだよね。今度凸ってくるわ」

彼がそう発言した回は珍しくグットがバッドを上回っていた。コメント欄では無邪気で邪悪な名無しさんからの凸待ち動画期待してます。という趣旨の落書きで埋め尽くされていた。そしていくつかの無害な動画が過ぎ去った後、

 

唐突に彼は動画を上げるのをやめた。

当然凸待ちの人々は激高した。私もなんだかんだここまでみたのにという意味不明な怒りに突き上げられて動画をみたくて仕方がなくなった。

 

ー見れるじゃないか。

 

僕はタナカのアイフォンを持っているのだから。

さっそく管理者フォーラムに飛ぶと、アップされる前の動画がボタンひとつで投稿できる状態で放置されていた。しかしどことなく雰囲気が違う。またサムネイルが設定されていないし、タイトルもいつもの寒々しいものではない。

ただ一言、アイへと。なっていた。

再生回数は0回。

作成者本人のビデオ再生回数もカウントされるから正真正銘ぼくがはじめての視聴者ということになる。再生ボタンを押す。一拍子の空白を挟む。いつもの固定カメラではなくアイフォンで取ったらい悪い画質の動画の断片では荒い呼吸が渦巻いていた。

「あーあなんでこんな事になったかな……」

画面が上下する。余程つかれているのか肩で息をしているようだ。

「本当に、ただ話そうと思っただけなんだ」

そのあとも自分の不幸を嘆いたり、いかに恵まれていないかを口早に震える口調で話していた。やはりいつもの彼とは似ても似つかない。一体何があったというのか。

カメラがゆっくりとなめるようにして下のほうへと移っていく。

次に映し出されたものに息を呑む。

そこには人が映っていた。正確に言えば、頭の割れ、中身の露出した人物が。である。

「いやさぁ。こいつが悪い。こいつが俺が利用されてるとか抜かすからさ」

しばらくは荒い息だけが続く。言葉を聞き逃さぬよう慎重に耳をそばだてる。

「うしろから、くふふ、バットでかち割ってやった。こいつ、面白かった。ふべらだって。くくく。北斗の拳でもそんなやられ方せんわな」

カメラがズームアップする。男はピクリとも動こうとはしない。紛れもない魂の抜けたただの肉塊に成り下がっていた。

「アイカワちゃん。ちゃんと俺やったよ。本当に。君のこと好きなのが伝わったかな?この動画見てくれるとうれしい。それじゃあまたね」

彼は自分の首に刃物を添えると、引き下ろした。血柱が高く舞い上がって天井をぬらして倒れた。しばらくの間痙攣する死体を映し、そのまま動画は切れた。

 

彼の死体がどうなったのか僕には分からない。

しかし、再生が一度もされていないということは少なくともアイカワにこの思いが通じることは無かったらしい。

僕の手元にいまだにそのアイフォンはある。

あとがき
解説

【ホラー/怖い話】大物youtuber

小説タイトル作者タグ読了予測時間(分)
みっくちゅじゅーちゅ夜空人間系、グロ注意4
その瞳は何色か夜空ミリタリー、人間系5
ドライブKAITO人間系、パッと読み1
トモダチ瀬尾標生心霊系3
犬鳴峠夜空心霊系5
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悪魔(下)瀬尾標生心霊系、洋風7
鼻(前編)夜空人間系、意味怖10
鼻(中編)夜空人間系、意味怖10
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(E)scapeGoat瀬尾標生人間系、サバイバル系7
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隠し家の三悪人(上)夜空人間系10
隠し家の三悪人(下)夜空人間系10
ホクロ夜空意味怖、閲覧注意5
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訳あり物件まるけす人間系、都市伝説、一部実話、パッと読み1
迷信不信初矢粒意味怖、心霊系4
産まれて来るキミへまるけす意味怖、心霊系5
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大物youtuber夜空意味怖、心霊系5
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