OVER ENDING【スピンオフ】眠らぬ女神が求めた答え エピローグ

ここからはもう全てが後日談であり、改変の余地のない過去である。
誰もが願うも変わることのない過去の話、それを少し語ろうと思う。

結論から言うと、ヨーロッパ政府軍所属第一魔術中隊隊長、エリス・アイゼンフーヴァーは生命としては死亡した。正確には、ヨーロッパ政府軍所属のグランツ中将の手によって殺されたと言った方がいいのだろう。
彼女が殺された理由、そしてログアウトプロセスが起動しなかった理由はちゃんと存在する。納得はいかなくとも、合理的な判断だという事は俺にでも理解出来た。
簡単に言うと、グランツ中将はとあるプロジェクトに加担していた。非人道的で非道徳的なプロジェクトに正確な名前は存在せず、ただハッキリとしていたのはプロジェクトの目的だけだった。
通称、ダイバージェンスプロジェクトと呼ばれたその計画はエリス・アイゼンフーヴァーのクローンを創造するという計画だった。
彼女から採取したDNAとその他必要不可欠な肉体部位を使用し、リマイン兵士の中でも天才的なまでの知性とFLOPSFloating Point Operations per secondsを所持するエリスの量産型を作り出して軍事利用することこそが彼らの究極の目的だった。
その非人道的行為に気付いたASH達が、尋問を受けてたグランツ中将から手に入れた情報を元に研究所の探索と破壊を目的として攻め込んだものの、脚を踏み入れた時にはもうもぬけの殻だったらしい。
これだけ聞くと研究の材料となったエリスが殺された理由が見当たらないと思う。
理由と言ってもそこまで複雑な理由があるわけでは無い。まずは実験に必要な材料をエリスがリマインしている途中に採取し、計画通りならばエリスを拉致して研究所まで持ち帰るという予定だったらしい。が、俺たちが計画と違い大戦に参加したため、当然エリスのログアウト不能の噂は直ぐに広がり俺たちの耳にも届いたわけだ。計画が知られた状態でエリスを拉致して研究所に行くとでもいうのであれば、簡単に研究所が見つかってしまうのは周知の事実。知っていれば、誰だって対策が出来るのだから。
だから不要となったエリスを、バックアップとして放置しておいたエリスを殺したのだろう。殺してしまえば、こちら側の戦力を大幅に削ることも出来るし、尻尾を掴まれる可能性も減る。
ダイバージェンスプロジェクトの関係者も情報漏洩を恐れていたから、早々にグランツ中将を回収しようと企んだらしいが、当然俺たちの監視の目があるから容易には回収できないと知りグランツ中将を見捨てた。その結果グランツ中将は死刑勧告を受け、今から数日後にはこの世からおさらばらしい。

このような事態を目の当たりにして冷静を保てたヤツはいなく、その中でも一番の傷を負ったのがセシルだった。
俺たちはリマインが終わってやっと彼女の死を確認できたが、セシルは俺たちよりも早く、エリスが殺される場面を目撃してしまったらしい。数週間のカウンセリングが終わってもなお、セシルの請け負った傷は簡単に消えてはくれなかった。
今でも何度も俺と目を合わせればこう口を開いて語りだす。
「私の所為で、エリスが死んだ」と。
自分が力がなかったために助ける事が出来なかったと、彼女はあの日以来ずっと自分を責め続けている。最初は俺もセシルを助けようと励ましたり落ち着かせたりはしたけれど、今では専門家の力を借りなければならない状況にいる程。もう俺に出来るものは何もないらしい。

俺は先程エリスは死んだと言ったが、厳密には彼女という個体はまだ生きている。
どういう事かというと、彼女が死んだと言われる原因は彼女の“肉体”が死亡したからなのだ。でも、リマインというのは肉体と精神を解離させて精神だけを電子世界に送り込むという技術だ。だからリマイン中には肉体が二つに分けられるという事、現実の肉体と、架空の電子体の二つに分解するんだ。
確かに現実での肉体は死んだ。だが電子世界に残留REMAINしたエリスの個人データは残っている。即ち、エリスは生きているのだ。現実世界から電子世界に移住したと考えれば簡単だろう。
現在はどこを放浪しているかは分からないが、彼女は確かに生きている。戦場を駆け巡り武器を取って、今でも笑いながら戦っているのだろう。

『ねぇお兄ちゃん聴いてる?』
「あぁ聞いてるよ。志望校に合格したんだって? 凄いじゃないか」
『えへへ、凄いでしょ~。県内でも一番の進学校なんだよ』
「お前、俺よりも頭良かったっけ?」
『当たり前じゃん。私だよ、馬鹿のお兄ちゃんとは違うっての』
「はいはい、そうですか」
『もう、お兄ちゃんそういう態度よくないよ!』

スピーカーの向うから聴こえてくる妹の声に意識を戻して、俺は続けていた会話を再開させる。久しぶりの妹との電話だ。ちゃんと相手してあげないと怒るからな、アイツ。

『そういえばさお兄ちゃん。次の休暇っていつ?』
「二週間後から一か月くらいかな。カウンセリングと脳の治療も兼ねているから結構長くなってるよ」
『それじゃさ、帰ってきたら色んな事教えてよ。今戦争がどうなっているかとか、軍隊はどうだとかさ』
「お前ってやつは。いいよ、色々教えてやるよ。俺が今でも生きている理由を。俺が今でも戦場を駆け巡る理由を」

一人の『眠らぬ女神』との出会いから始まった、俺の『物語OVER ENDING』を。

<了>

◇OVER ENDING【スピンオフ】消えた女神の求めた答え エピローグ

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なぜコウヤはモテないのかRe:bit瀬尾標生
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